Dave Douglas

Dave Douglas Interview.

協力 : 平間 久美子

Q : 今日は、ご自宅にお招きいただき、ありがとうございます。このインタビューでは、あなたのアーティストとしての一面と、レーベル・オーナーとしての側面の両方について、お伺いしたいと思います。あなたは1993年のリーダーとしてのレコーディング・デビュー以来、毎年複数枚のアルバムをリリースする多作なアーティストとして知られます。2000年からは、メジャー・レーベルの RCA から精力的に制作を続け、2005年に自己のレーベル、グリーンリーフを立ち上げてからも、すでに21枚のリーダー作を発表しています。まず、RCA時代と、グリーンリーフを立ち上げてからの制作姿勢の違いについて、お話し下さい。

DD : 今年の4月に亡くなったプロデューサーのスティーヴ・バッカーが、RCAにスカウトしてくれた。当時としては驚く金額が呈示されて、この金額で最高のアルバムを創ってくれと言われた。もちろん、ベストを尽くしたけれど、ちょうどその頃は、レコード・ビジネスの過渡期で、RCA は BMGに吸収され、BMGはソニーに買われた。その度に担当者が代わり、アルバムの企画をプレゼンしなければいけなかった。独立したら、リスクは大きいけど身軽になったね。朝起きて、面白いアイデアが浮かぶと、すぐパートナー達に電話する。彼らが賛成してくれる時もあれば、そうでない時もある。でも、これはやるべきだと思ったことは、反対されてもやる。昔から、音楽が私をつき動かしてきた。グリーンリーフを立ち上げて10年近くがたって、私はある種の自信を持った。アルバムを制作して発売すれば、ある程度の時間がたつと投じた資金が回収でき、また次のアルバムの制作が可能になる。今は健全な状況で、運営されているよ。

Q ; あなた自身の作品について、伺わせてください。あなたのグループは、エレクトリックからアコースティック、ビッグバンドからデュオまで多岐にわたっています。そのヴァラエティに富んだ活動の原動力は、どこから来るのでしょうか?

DD : 私は現在51歳で、今までに様々なスタイルで音楽を創造してきたけど、共通する1本のラインがあるとしたら、ポップとオールド・フォークのフィーリングを持っていることだと思う。すべての作品に魂を込めて演奏をし、その表現手段として利用できる現代のテクノロジーはすべて使う。だから時代遅れになったりはしないと思う。そして絶対に誰かの模倣はしない、自分自身の過去の作品の模倣もしない。常にゼロから始めて前に進み続ける。そして次に何をすべきかを考えている。私はいろいろな音楽に挑戦しているけど、リスナーはすべてに注目してくれているわけではない。でも大切なのは、とにかく持続して音楽を創り続けることだと思う。願わくは、長い時を経て、私が何を表現したかったか、誰かが理解してくれたら嬉しい。

Q: またトリビュート作が、いくつかあります。レスター・ボウイ(tp)に捧げた、ブラス・エクスタシーや、2014年にはジミー・ジェフリー(ts,cl)をトリビュートしています(”Riverside”)。トリビュート・アルバムを制作する意義について聞かせていただけないでしょか。

DD : よい音楽があれば、それを人と共有したくなる。コンサートに行って、観客同士で感動を分かち合えるのが音楽の素晴らしさだと思う。私が素晴らしいと思った先人の音楽を、シェアしたい。しかし私は、同じように演奏するつもりはない。曲のスピリットを抽出し、エレメンツを分析して、それに対して今の自分がどのように表現が出来るかを考えている。私の演奏を聴いて、ジミー・ジェフリーらの重要性に改めて気が付いてくれたら嬉しい。先人の影響から逃れることは出来ない。彼らの音楽にはストーリーがある。そのストーリーを理解し、さらに自分自身のルーツを発見して、それをリスナーや共演者とシェアし、自らのストーリーを紡ぐことが重要だと思う。

Q : 教育者としての側面について、お聞かせください。あなたは、多くのワークショップを開催なさっています。2002年から2012年にかけては、カナダのバンフで毎年開催された、ワークショップ・イン・ジャズ・アンド・クリエイティヴ・ミュージックのアーティスティック・ディレクターを務め、才能ある若手を送り出し、高く評価されています。

DD : バンフでのワークショップでは、自分たちがどのように音楽を創造し、それをどのように学生達に伝えるかを真剣に考え、一緒に演奏し音楽で対話することが出来て、素晴らしい経験だった。誰かに音楽を教えてシェアすると言うことは、必ず相手からも学ぶことがあり、自分自身の音楽も深めることになる。私が毎年やっていたレッスンの一つは、参加者のグループに、バッハのコラールを歌わせること。4声のコラールには、マジカルな驚くべき要素がある。リズム、ハーモニー、メロディー、作曲、アレンジ、アンサンブルの中でどう演奏するかが、すべて含まれていて、多くのことを学べる。最終年の2012年に委託作品を依頼されたので、バッハのコラールのヴァリエーションに、10年ぶりにリユニオンしたセクステットで挑戦した。それが DD | 50の中の一枚、”Pathway”だ。

Q : グリーンリーフは、あなたのワークショップの出身者も含めて、若手のプレイヤーも多くフィーチャーしています。

DD : 私が若い頃は、まずレコード会社と契約してアルバムを制作することが大きな関門だったけど、今は誰もが名刺代わりにアルバムを作っている。でも、そのアルバムを人々に聴いてもらう機会を作るのが難しくなってきた。最近ある若手のミュージシャンにアルバムを作るようにアドヴァイスしたら、彼自身CDを聴かないし、アルバムを制作することの意味が見いだせないと言われて驚いたよ。彼は YouTubeやスポッティファイ、サウンド・クラウドでしか聴かないと言う。リスナーに、どうやって自分たちの創造した音楽を、聴いてもらえるようにするかは難しい問題で、いまも試行錯誤を繰り返している。昔とはだいぶ状況が違うと思う。だからアーティスト自身が、いろいろ自分でアプローチする必要がある。才能ある若手には、私もいろいろアドヴァイスや、サポートをしているけどね。

Q : 2005年から今まで、音楽業界でもいろいろな変動があったと思います。これからの10年をどのように展望なさいますか。

DD : 音楽ビジネスについては、半年ごとに状況が変わるから、何とも言えないね。グリーンリーフを始めた頃は、まだインターネットを介したビジネスはまだ一般的じゃなかったけど、私たちも学習して、今では重要なツールとなった。確実に言えることは、音楽の持つスピリットは、変わらないということ。これからも発表される音楽は、ますます増えてゆきクオリティも高くなっていくと思う。ただ、それらが CDという形で聴かれるか、アルバムが今までのスタイルで制作されるかは、予想が出来ない。

Q : グリーンリーフの日本でのディストリビューション状況を、教えて下さい。また日本のファンへのメッセージをお願いします。

DD : E1(エンターテインメント1)ミュージックと、関西のリズム・マンというディストリビューターが取り扱ってくれている。あと、Greenleafのサイトからも、日本へ発送している。日本へはジョン・ゾーン(as)のグループや、SFコレクティヴでは行ったことがあるけど、自分のリーダー・グループでは、まだ行ったことがないんだ。ぜひ、近い将来、演奏したいね。

Q : 2015年はグリーンリーフ10周年ですね。現在リリースが計画されている作品について。お話し下さい。

DD : 若手中心の私のクインテットの次のアルバム、新たなエレクトリック・プロジェクト、Dave Douglas High Risk Electric Group、そして、ジョー・ロヴァーノ(ts)とのウェイン・ショーター・トリビュート・プロジェクト”Sound Prints”も、ブルノートとグリーンリーフのジョイント・レーベルから発売される。10周年記念のスペシャル・リリースも企画しているから、ぜひ楽しみにして欲しい。

Q : 2015年も、グリーンリーフは要注目ですね。本日はお忙しい中、ありがとうございました。